自分からどんどん遠ざかる、というサイアク
2004年5月22日 綴織やけに神妙な夢を見て目が覚めた。
現在 06:55 AM。
とりあえず今の気持ちを
言葉に残さずにはおられないので
ここに記しておくことにする。
何の集まりだかわかんないけど
相当数の男女が一つの部屋に集められ
「コの字型」に並べられたテーブルに
無作為に座らされている。
手元にはパンフレットのようなものがあって
開いてみると NO.1 から順番に
男女の顔写真が対になって
それぞれの略歴と共に延々と紹介されている。
そこには俺の顔写真も
恋1の人の顔写真も載せられているが
それぞれバラバラの男女と対になっている。
机の上には
まるで「へぇ〜ボタン」のような
ボタンが付いている。
突如、モニターのようなものが出てきて
NO.01 から順番に男女の対の写真を映し始める。
ナレーションみたいなものがごにょごにょ入って
それでは判定をどうぞ、と促すので
ああこれのことか、とボタンを押してみる。
どうやら、得票数によって
基準以上を上回ればその男女は
お互いの連絡先を交換できるシステムに
なっているらしい。
無作為且つ本人達の意図が全く排除された
お見合いシステムのようなものか。
かと思えば
かの「ねるとん」と同じように
乱入もできるようで
その都度どちらの相手が
連絡先を交換するのに相応しいのか
判定が行われた。
恋1の人の相手は一見するとサラリーマン風の
こざっぱりとした男性で
どうやら得票数は基準以上をマークしたらしい。
何故か俺は乱入していない。
互いの連絡先を交換しているのを見て
俺は強烈な焦りを覚える。
一通りそのお見合いゲームも終わり
何故か舞台は路地に。
少し離れたところに恋1の人の
後姿が見える。
追いかけて
声をかけてみたい衝動にかられる
ここでふいにしたら
もう二度と会えない
何故かそんな切迫感が頭をよぎる。
それでも後を追えない。
今話しかけてどーするのか?
さっき連絡先を交換した相手に悪いんじゃないか
俺の存在はただ迷惑なだけなんじゃないのか
ちうか
そういうことを理由に立てて
自分が受け入れてもらえていない
というサイアクの事態から
逃げてたんじゃなかろうか。
あの人の影はどんどん遠ざかり
やがてどこかの角を曲がって消えてしまった。
視界から消えてしまうと
より一層寂しさやら未練やら嫉妬心やらが増してくる。
そこで目覚める。
これが今の距離感なのかなとふと思う。
というより
無理に現実から自分を引き剥がそうとしてる
自分の弱さの表れといった方が正しいのかもしれない。
距離を取ろうとしているのは俺の方だろうからな。
しかし、未練や嫉妬心というのは
実に強烈な負のエネルギーなんだなと
今更ながら思い出した。
こんな風に文章に落とすことによって
ある程度は凪いでくるけど
よくもまぁこれだけ重くじんじんと
腫れぼったい感触を伴うものだ。
いかに自分が囚われているのかが良くわかる。
何かの童話で石を腹に詰められたおおかみのような感じだ。
このまま井戸に落ちたらきっと溺れ死んでしまう。
あの人が離れていってしまう原因は
俺の中にあるもので
それを何とか変えてしまいたいけど
それは何年にも渡って使い古されてきた飯盒の
底にこびりついてとれないコゲのようなもので
どうにも変えられないような気もする。
とりあえず今は
この重く腫れぼったい感触を
どうにかしないと
やっとれん。
この夢にも何らかの意味があるのだ。
それをどないして現実への力へと
転換できるもんやら。
世界の中心でアレを叫んだときは
感覚を殺いで殺いで殺ぎまくって
何も無い荒野になったものと
自分を思い込んで
ひどい悲しみをやり過ごしたもんだが。
もうあんな荒野へと
自分を追いやりたくも無いしなぁ。
荒野に成り切れるもんでも無し。
いや、それだけはすまい。
今までの人々はどんな風にして
この重みから立ち上がったんだろう?
現在 06:55 AM。
とりあえず今の気持ちを
言葉に残さずにはおられないので
ここに記しておくことにする。
何の集まりだかわかんないけど
相当数の男女が一つの部屋に集められ
「コの字型」に並べられたテーブルに
無作為に座らされている。
手元にはパンフレットのようなものがあって
開いてみると NO.1 から順番に
男女の顔写真が対になって
それぞれの略歴と共に延々と紹介されている。
そこには俺の顔写真も
恋1の人の顔写真も載せられているが
それぞれバラバラの男女と対になっている。
机の上には
まるで「へぇ〜ボタン」のような
ボタンが付いている。
突如、モニターのようなものが出てきて
NO.01 から順番に男女の対の写真を映し始める。
ナレーションみたいなものがごにょごにょ入って
それでは判定をどうぞ、と促すので
ああこれのことか、とボタンを押してみる。
どうやら、得票数によって
基準以上を上回ればその男女は
お互いの連絡先を交換できるシステムに
なっているらしい。
無作為且つ本人達の意図が全く排除された
お見合いシステムのようなものか。
かと思えば
かの「ねるとん」と同じように
乱入もできるようで
その都度どちらの相手が
連絡先を交換するのに相応しいのか
判定が行われた。
恋1の人の相手は一見するとサラリーマン風の
こざっぱりとした男性で
どうやら得票数は基準以上をマークしたらしい。
何故か俺は乱入していない。
互いの連絡先を交換しているのを見て
俺は強烈な焦りを覚える。
一通りそのお見合いゲームも終わり
何故か舞台は路地に。
少し離れたところに恋1の人の
後姿が見える。
追いかけて
声をかけてみたい衝動にかられる
ここでふいにしたら
もう二度と会えない
何故かそんな切迫感が頭をよぎる。
それでも後を追えない。
今話しかけてどーするのか?
さっき連絡先を交換した相手に悪いんじゃないか
俺の存在はただ迷惑なだけなんじゃないのか
ちうか
そういうことを理由に立てて
自分が受け入れてもらえていない
というサイアクの事態から
逃げてたんじゃなかろうか。
あの人の影はどんどん遠ざかり
やがてどこかの角を曲がって消えてしまった。
視界から消えてしまうと
より一層寂しさやら未練やら嫉妬心やらが増してくる。
そこで目覚める。
これが今の距離感なのかなとふと思う。
というより
無理に現実から自分を引き剥がそうとしてる
自分の弱さの表れといった方が正しいのかもしれない。
距離を取ろうとしているのは俺の方だろうからな。
しかし、未練や嫉妬心というのは
実に強烈な負のエネルギーなんだなと
今更ながら思い出した。
こんな風に文章に落とすことによって
ある程度は凪いでくるけど
よくもまぁこれだけ重くじんじんと
腫れぼったい感触を伴うものだ。
いかに自分が囚われているのかが良くわかる。
何かの童話で石を腹に詰められたおおかみのような感じだ。
このまま井戸に落ちたらきっと溺れ死んでしまう。
あの人が離れていってしまう原因は
俺の中にあるもので
それを何とか変えてしまいたいけど
それは何年にも渡って使い古されてきた飯盒の
底にこびりついてとれないコゲのようなもので
どうにも変えられないような気もする。
とりあえず今は
この重く腫れぼったい感触を
どうにかしないと
やっとれん。
この夢にも何らかの意味があるのだ。
それをどないして現実への力へと
転換できるもんやら。
世界の中心でアレを叫んだときは
感覚を殺いで殺いで殺ぎまくって
何も無い荒野になったものと
自分を思い込んで
ひどい悲しみをやり過ごしたもんだが。
もうあんな荒野へと
自分を追いやりたくも無いしなぁ。
荒野に成り切れるもんでも無し。
いや、それだけはすまい。
今までの人々はどんな風にして
この重みから立ち上がったんだろう?
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アイリッシュ・コーヒー
2004年5月21日 綴織海の見渡せる丘に上るには
いささか雨が強過ぎた
--------------------------------------------------------
気を悪くした君をなだめるにはきっと
多大な時間と労力がいるだろう
僕はそのことを思い
ふぅ、と重い色のため息をついた
--------------------------------------------------------
ベッドの上に横たわって
窓外を恨めしそうに見やる君
その背中は僕に
なにかとてつもなく懐かしい何かを思い起こさせた
子供の頃
雨に降られた休みの日には
いつもそうしていた気がする
--------------------------------------------------------
雨がちりちりと
周りの空気を冷やしていった
窓の内側に時折付く水滴を拭いながら
取り返しのつかない何かが失われたような顔つきで
外を見ながら震えている君の肩にそっと口づける
--------------------------------------------------------
二つ分のアイリッシュ・コーヒーで
僕達は心のすり替え作業にいそしむことにする
クリームを軽くフロートさせた二つの温かいマグカップが
僕と君の中にある同じわだかまりを徐々にぼかしていく
--------------------------------------------------------
そして二人
顔を見合わせて少し笑う
こんなふうに段々ずるい大人になっていくんだなぁ
君の言葉は少し寂しげで
少し誇らしげでもあった
--------------------------------------------------------
窓を、幾つもの水滴が流れて消えた
いささか雨が強過ぎた
--------------------------------------------------------
気を悪くした君をなだめるにはきっと
多大な時間と労力がいるだろう
僕はそのことを思い
ふぅ、と重い色のため息をついた
--------------------------------------------------------
ベッドの上に横たわって
窓外を恨めしそうに見やる君
その背中は僕に
なにかとてつもなく懐かしい何かを思い起こさせた
子供の頃
雨に降られた休みの日には
いつもそうしていた気がする
--------------------------------------------------------
雨がちりちりと
周りの空気を冷やしていった
窓の内側に時折付く水滴を拭いながら
取り返しのつかない何かが失われたような顔つきで
外を見ながら震えている君の肩にそっと口づける
--------------------------------------------------------
二つ分のアイリッシュ・コーヒーで
僕達は心のすり替え作業にいそしむことにする
クリームを軽くフロートさせた二つの温かいマグカップが
僕と君の中にある同じわだかまりを徐々にぼかしていく
--------------------------------------------------------
そして二人
顔を見合わせて少し笑う
こんなふうに段々ずるい大人になっていくんだなぁ
君の言葉は少し寂しげで
少し誇らしげでもあった
--------------------------------------------------------
窓を、幾つもの水滴が流れて消えた
ある朝
ぼくのほらあなの前に
一通のてがみが届いていた
--------------------------------------------------------
「おおかみさま
あなたが当行にあずけられたじかんが満期になりました
5年ぶんの利息が付いて全部で8年と6ヶ月です
お引き出しにこられてください」
--------------------------------------------------------
そういえば前に
知り合いにたのまれて通帳をいっこ作ったっけ
そのときに少しだけじかんをあずけたような…
とりあえずぼくは
その銀行にでかけてみた
--------------------------------------------------------
銀行の前は多くの動物でごったがえしていた
みんな手に手にあのてがみをもっている
入口でてがみと引き換えに整理券をくばっている
--------------------------------------------------------
ぼくは整理券を手に店内のいすにこしかけて
自分の番が回ってくるのをじっと待っていた
--------------------------------------------------------
ぼくのよこに座っていたあなぐまさんがはなしかけてきた
「にいさん、じかんあずけといて良かった思うやろ?
わしは10年前からじぶんのなけなしのじかんを
ひまを見つけては積み立てとって
いまではもう50年ぶんにもなっとんねや」
--------------------------------------------------------
じかんをそんなにふやしてどうするんですか?
「にいさん変なこと聞きよるなあ
なが生きするにきまっとるやないの
なが生きしたら色んなものが見れるんやで」
そこまで話して順番がまわってきたので
あなぐまさんはいってしまった
--------------------------------------------------------
しばらくしてなまえを呼ばれたので窓口にいってみた
きれいなねこのおねえさんがさっそく説明してくれた
ぼくが5年前にあずけておいたじかんが満期になったらしい
そしてねこのおねえさんは
このまま銀行にあずけておくとさらにふえるようなことを
ものすごくねっしんに説明した
--------------------------------------------------------
ぼくはべつに必要を感じなかったので
自分のじかんをぜんぶ返してもらうことにした
もったいないもったいないと
ねこのおねえさんがしきりにそういうのが
きもち悪く思えてきたので
ぼくはまったくとりあわなかった
--------------------------------------------------------
返してもらったじかんは思ってたよりずっしり重かった
いのちが延びたなって気になった
帰りがけに店内を見回すと
あなぐまさんがまだねっしんに話に耳をかたむけていた
--------------------------------------------------------
ぼくはあずけておいたじかんぶん
ぞんぶんに飛んだり跳ねたりして暮らした
たまにあなぐまさんに会うと
「にいさんじかんのむだづかいはいかんでぇ」
とえらそうにいわれたりしたが
今が楽しかったので特に腹は立たなかった
--------------------------------------------------------
ある日
その銀行が潰れそうだ
そんなうわさが広まった
--------------------------------------------------------
じぶんのじかんをあずけていたどうぶつたちは
冷や汗をかきながらわれさきに銀行に押しかけていった
聞けば
皆のじかんをぶらさげていた巨木が
ひどい嵐のせいでたおれてしまったということだった
--------------------------------------------------------
状況はほとんど収拾がつかなくなっていた
ほとんどのじかんは嵐がどこかに持ち去ってしまっていた
銀行がうしなったものが大きすぎたため
じぶんの今のじかんまで
はんたいに取られてしまっているものもいた
--------------------------------------------------------
よほどながいじかんをあずけていたのだろう
今のじかんを取られすぎたのか
あなぐまさんはそのまま
なにも信じられないような顔つきをしたまま
くやしそうにしんでしまった
--------------------------------------------------------
ぼくはその様子をおかの上からながめていたが
飽きてきたのでじぶんのほらあなにもどって
ひとねむりすることにした
なが生きすると色んなものが見れるんだな
そう思いながらこのまえいった海の夢をみた
--------------------------------------------------------
ぼくのほらあなの前に
一通のてがみが届いていた
--------------------------------------------------------
「おおかみさま
あなたが当行にあずけられたじかんが満期になりました
5年ぶんの利息が付いて全部で8年と6ヶ月です
お引き出しにこられてください」
--------------------------------------------------------
そういえば前に
知り合いにたのまれて通帳をいっこ作ったっけ
そのときに少しだけじかんをあずけたような…
とりあえずぼくは
その銀行にでかけてみた
--------------------------------------------------------
銀行の前は多くの動物でごったがえしていた
みんな手に手にあのてがみをもっている
入口でてがみと引き換えに整理券をくばっている
--------------------------------------------------------
ぼくは整理券を手に店内のいすにこしかけて
自分の番が回ってくるのをじっと待っていた
--------------------------------------------------------
ぼくのよこに座っていたあなぐまさんがはなしかけてきた
「にいさん、じかんあずけといて良かった思うやろ?
わしは10年前からじぶんのなけなしのじかんを
ひまを見つけては積み立てとって
いまではもう50年ぶんにもなっとんねや」
--------------------------------------------------------
じかんをそんなにふやしてどうするんですか?
「にいさん変なこと聞きよるなあ
なが生きするにきまっとるやないの
なが生きしたら色んなものが見れるんやで」
そこまで話して順番がまわってきたので
あなぐまさんはいってしまった
--------------------------------------------------------
しばらくしてなまえを呼ばれたので窓口にいってみた
きれいなねこのおねえさんがさっそく説明してくれた
ぼくが5年前にあずけておいたじかんが満期になったらしい
そしてねこのおねえさんは
このまま銀行にあずけておくとさらにふえるようなことを
ものすごくねっしんに説明した
--------------------------------------------------------
ぼくはべつに必要を感じなかったので
自分のじかんをぜんぶ返してもらうことにした
もったいないもったいないと
ねこのおねえさんがしきりにそういうのが
きもち悪く思えてきたので
ぼくはまったくとりあわなかった
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返してもらったじかんは思ってたよりずっしり重かった
いのちが延びたなって気になった
帰りがけに店内を見回すと
あなぐまさんがまだねっしんに話に耳をかたむけていた
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ぼくはあずけておいたじかんぶん
ぞんぶんに飛んだり跳ねたりして暮らした
たまにあなぐまさんに会うと
「にいさんじかんのむだづかいはいかんでぇ」
とえらそうにいわれたりしたが
今が楽しかったので特に腹は立たなかった
--------------------------------------------------------
ある日
その銀行が潰れそうだ
そんなうわさが広まった
--------------------------------------------------------
じぶんのじかんをあずけていたどうぶつたちは
冷や汗をかきながらわれさきに銀行に押しかけていった
聞けば
皆のじかんをぶらさげていた巨木が
ひどい嵐のせいでたおれてしまったということだった
--------------------------------------------------------
状況はほとんど収拾がつかなくなっていた
ほとんどのじかんは嵐がどこかに持ち去ってしまっていた
銀行がうしなったものが大きすぎたため
じぶんの今のじかんまで
はんたいに取られてしまっているものもいた
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よほどながいじかんをあずけていたのだろう
今のじかんを取られすぎたのか
あなぐまさんはそのまま
なにも信じられないような顔つきをしたまま
くやしそうにしんでしまった
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ぼくはその様子をおかの上からながめていたが
飽きてきたのでじぶんのほらあなにもどって
ひとねむりすることにした
なが生きすると色んなものが見れるんだな
そう思いながらこのまえいった海の夢をみた
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わたしのあかちゃんには
どんなたましいが
めぐってくるのだろう
できればせかいのふしぎを
いろいろめぐってきた
そんなたましいでありますように
にくにしみついたよくを
あじわいつくし
そこにおぼれるおろかさも
おぼれたあとのむなしさも
みをもってしってきた
そんなたましいでありますように
たとえころんでしまっても
りんとしたまなざしで
おのずとまえをむくような
そんなたましいでありますように
もしかなうならば
うちゅうのおとを
にじをつかむよりもせいかくに
きれいにだいじにかなでられる
そんなたましいでありますように
ひとがおかすあやまちを
みにうけたときのかなしさや
ひとにいたみをあたえることの
おそろしささえもしっている
そんなたましいでありますように
そしてなによりも
じぶんがたいようであることを
だれよりもしっていて
だれにでもあたたかくできる
そんなたましいでありますように
-・-・-・-・-・-・-・-
わたしはどんなたましいと
どんなかたちでであっても
すなおにあたたかくできるだろう
-・-・-・-・-・-・-・-
わたしのあかちゃんには
どんなたましいが
めぐってくるのだろう
わたしはいまから
たのしみで
こころのそこから
たのしみで
どんなたましいが
めぐってくるのだろう
できればせかいのふしぎを
いろいろめぐってきた
そんなたましいでありますように
にくにしみついたよくを
あじわいつくし
そこにおぼれるおろかさも
おぼれたあとのむなしさも
みをもってしってきた
そんなたましいでありますように
たとえころんでしまっても
りんとしたまなざしで
おのずとまえをむくような
そんなたましいでありますように
もしかなうならば
うちゅうのおとを
にじをつかむよりもせいかくに
きれいにだいじにかなでられる
そんなたましいでありますように
ひとがおかすあやまちを
みにうけたときのかなしさや
ひとにいたみをあたえることの
おそろしささえもしっている
そんなたましいでありますように
そしてなによりも
じぶんがたいようであることを
だれよりもしっていて
だれにでもあたたかくできる
そんなたましいでありますように
-・-・-・-・-・-・-・-
わたしはどんなたましいと
どんなかたちでであっても
すなおにあたたかくできるだろう
-・-・-・-・-・-・-・-
わたしのあかちゃんには
どんなたましいが
めぐってくるのだろう
わたしはいまから
たのしみで
こころのそこから
たのしみで
上空の風はいつも前向き
2004年4月24日 綴織あいつはいつも
暇を見つけては
ふうせんをふくらませていた
手のひらにおさまるくらいの
ちいさなゴムふうせんだ
--------------------------------------------------------
来る日も来る日も
こつこつとふうせんに
息を吹き込みつづけていた
ゴムふうせんは
もうかなりの大きさに
ふくらんでいた
--------------------------------------------------------
誰かがやめろといっても
あいつはけっして
ふうせんをふくらませることを
やめはしなかった
じかんをみつけては
更にこつこつと
ふうせんをふくらませつづけた
--------------------------------------------------------
あいつはとうとう
自分のふくらませたふうせんで
空に浮かび上がった
--------------------------------------------------------
気持ちよさそうに
空を漂っているあいつに
「ねえ、どうしてそんなことが
できたんだい?」
と聴いてみた
--------------------------------------------------------
「きみのその手にもっているのは
いったい何だい?」
あいつは僕の手のひらを指さした
僕の手には
たしかにひとつのふうせんがあった
--------------------------------------------------------
「人は誰だって
はじめからふうせんを持ってるんだ
だけど
日々あらわれるがらくたを片付けるのに
気を取られすぎるあまり
ふうせんのことなんて
すっかり忘れてしまうもんなんだ」
--------------------------------------------------------
「おれは空を飛びたかったからね
来る日も来る日も
誰かにばかにされようとも
ふうせんだけは手放さなかった
まぁそういうことさ」
--------------------------------------------------------
話し終わったあいつの顔は
とてもほこらしげで
きっとそのまま
たいようになれるんじゃないか
そうおもえるくらい
まぶしかった
--------------------------------------------------------
それいらい僕は
暇を見つけては
こつこつとふうせんを
ふくらませつづけている
--------------------------------------------------------
暇を見つけては
ふうせんをふくらませていた
手のひらにおさまるくらいの
ちいさなゴムふうせんだ
--------------------------------------------------------
来る日も来る日も
こつこつとふうせんに
息を吹き込みつづけていた
ゴムふうせんは
もうかなりの大きさに
ふくらんでいた
--------------------------------------------------------
誰かがやめろといっても
あいつはけっして
ふうせんをふくらませることを
やめはしなかった
じかんをみつけては
更にこつこつと
ふうせんをふくらませつづけた
--------------------------------------------------------
あいつはとうとう
自分のふくらませたふうせんで
空に浮かび上がった
--------------------------------------------------------
気持ちよさそうに
空を漂っているあいつに
「ねえ、どうしてそんなことが
できたんだい?」
と聴いてみた
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「きみのその手にもっているのは
いったい何だい?」
あいつは僕の手のひらを指さした
僕の手には
たしかにひとつのふうせんがあった
--------------------------------------------------------
「人は誰だって
はじめからふうせんを持ってるんだ
だけど
日々あらわれるがらくたを片付けるのに
気を取られすぎるあまり
ふうせんのことなんて
すっかり忘れてしまうもんなんだ」
--------------------------------------------------------
「おれは空を飛びたかったからね
来る日も来る日も
誰かにばかにされようとも
ふうせんだけは手放さなかった
まぁそういうことさ」
--------------------------------------------------------
話し終わったあいつの顔は
とてもほこらしげで
きっとそのまま
たいようになれるんじゃないか
そうおもえるくらい
まぶしかった
--------------------------------------------------------
それいらい僕は
暇を見つけては
こつこつとふうせんを
ふくらませつづけている
--------------------------------------------------------
「人と関係を結ぶということは、
ひときれの布を織り上げていくのと一緒」
そういいながらあなたは僕の髪にはさみを入れていく。
シャキ、シャキ、という歯切れの良い音を立てながら、
僕の髪が舞い落ちていく。
「布、ですか?どんな布?化学繊維でもいいわけですか?」
合点がいかない風な僕と鏡越しに目を合わせ、
あなたはこう付け加える。
「まぁ、手織りの方が近いかもしれないわね
布ってほら、
色んな糸が交互に織り合わさって一つになってるわけじゃない
糸のバリエーションで様様な模様もつけられたり…
人との関係もそうなんだよ
一つの布を織り上げるのとさほど変わりはないのよ」
判ったような判らないような顔してる僕を置き去りにするように、
髪の毛は短く切り揃えられていく。
「これでいいかな?さっぱりしたでしょ」
後ろ髪を見るための手鏡を僕に渡しながら、あなたは窓の外を見遣る。
窓の外は晴れ空がどこまでも広がっていた。
すっきりした前髪から覗く空は、まるで透明度の高い湖のようだ。
また一つ、糸が織り込まれたのを感じた。
ひときれの布を織り上げていくのと一緒」
そういいながらあなたは僕の髪にはさみを入れていく。
シャキ、シャキ、という歯切れの良い音を立てながら、
僕の髪が舞い落ちていく。
「布、ですか?どんな布?化学繊維でもいいわけですか?」
合点がいかない風な僕と鏡越しに目を合わせ、
あなたはこう付け加える。
「まぁ、手織りの方が近いかもしれないわね
布ってほら、
色んな糸が交互に織り合わさって一つになってるわけじゃない
糸のバリエーションで様様な模様もつけられたり…
人との関係もそうなんだよ
一つの布を織り上げるのとさほど変わりはないのよ」
判ったような判らないような顔してる僕を置き去りにするように、
髪の毛は短く切り揃えられていく。
「これでいいかな?さっぱりしたでしょ」
後ろ髪を見るための手鏡を僕に渡しながら、あなたは窓の外を見遣る。
窓の外は晴れ空がどこまでも広がっていた。
すっきりした前髪から覗く空は、まるで透明度の高い湖のようだ。
また一つ、糸が織り込まれたのを感じた。
たからもの たからもの
2004年4月19日 綴織うっかりもののぼくは
だいじにとっておいたガラス石を
深くて暗い井戸のそこに
落としてしまったんだ
--------------------------------------------------------
おひさまの光を身にとおして
きらきらとおどらせた
ぼくのたからもの
その光もとどかない井戸のそこで
ぼくのたからものがふるえているかと思うと
いてもたってもいられなくて
ぼくは井戸におりることにした
--------------------------------------------------------
野にあそぶ風たちがロープになってくれた
井戸の傍らにたたずむ大木にそれをささえてもらい
ぼくは暗い井戸のそこにゆっくりと降りていった
--------------------------------------------------------
井戸のそこは思っていたよりうんと暗くて
見上げると入口がお月さまみたいにかすんで
ぼくの息づかい以外に生きているものもなく
そのままぼくも凍って
黒く透き通ってしまいそうだ
--------------------------------------------------------
とつぜんぼくの足が水に浸かった
死神みたいな冷たさだ
この中にぼくのたからものをさがしに
身を沈めるのかと思うと
心の芯がしびれて
後ずさりしてしまいそうなきもちになった
--------------------------------------------------------
ぼくはおひさまの光をうけてきれいに光る
たからもののことを一心におもった
そのおもいを道しるべにして
ぼくはゆっくりと水の中に入っていった
--------------------------------------------------------
水は思っていた以上に冷たかった
すぐ近くで地獄の冷凍庫が
フタを開けてるんじゃないかと
おもえるくらい冷たかった
体の感覚がだんだんにぶくなっていくのがわかる
早くたからものを見つけないと
ぼくまでここから出られなくなる
--------------------------------------------------------
ぼくはただひたすらたからもののことをおもった
そのおもいは灯火になり
水の中をうすあかく照らした
はるか下のほうに
にぶく光るものがあった
ぼくは必死で手をのばし
どろの中からそれをつかみ出した
--------------------------------------------------------
井戸のそとにでてみると
ぼくのたからものはたしかに
ぼくのたからものだったが
前よりも黒くにぶった色をしていた
ぼくはかなしくなった
もう前のようにおひさまの光を
おどらせてはくれないのだろうか?
--------------------------------------------------------
ぼくは自分のシャツのすそで
どろでよごれたたからものをみがいてみた
だいじにだいじに
どろの中にまじっている小石できずがつかないように
--------------------------------------------------------
そうしているうちに
たからもののくすんだ色が
だんだんうすらいで
深い青色に変わったんだ
おひさまの光に透かせてみると
前とはちがったけど
ちょっと落ちついた色の光がおどった
--------------------------------------------------------
前とはたしかに変わってしまったけど
ぼくのたからものは
やっぱりぼくのたからもので
これからもぼくのたからもので
ありつづけるだろう
--------------------------------------------------------
それからぼくたちは
おひさまの光をたっぷりうけた草のうえで
少しのあいだ眠りにおちた
風が ひょうほーぅ と
ぼくたちをやさしくなでていった
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
【copyright おおかみ】
一応主張しておこうと思って
無粋ですまん
だいじにとっておいたガラス石を
深くて暗い井戸のそこに
落としてしまったんだ
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おひさまの光を身にとおして
きらきらとおどらせた
ぼくのたからもの
その光もとどかない井戸のそこで
ぼくのたからものがふるえているかと思うと
いてもたってもいられなくて
ぼくは井戸におりることにした
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野にあそぶ風たちがロープになってくれた
井戸の傍らにたたずむ大木にそれをささえてもらい
ぼくは暗い井戸のそこにゆっくりと降りていった
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井戸のそこは思っていたよりうんと暗くて
見上げると入口がお月さまみたいにかすんで
ぼくの息づかい以外に生きているものもなく
そのままぼくも凍って
黒く透き通ってしまいそうだ
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とつぜんぼくの足が水に浸かった
死神みたいな冷たさだ
この中にぼくのたからものをさがしに
身を沈めるのかと思うと
心の芯がしびれて
後ずさりしてしまいそうなきもちになった
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ぼくはおひさまの光をうけてきれいに光る
たからもののことを一心におもった
そのおもいを道しるべにして
ぼくはゆっくりと水の中に入っていった
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水は思っていた以上に冷たかった
すぐ近くで地獄の冷凍庫が
フタを開けてるんじゃないかと
おもえるくらい冷たかった
体の感覚がだんだんにぶくなっていくのがわかる
早くたからものを見つけないと
ぼくまでここから出られなくなる
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ぼくはただひたすらたからもののことをおもった
そのおもいは灯火になり
水の中をうすあかく照らした
はるか下のほうに
にぶく光るものがあった
ぼくは必死で手をのばし
どろの中からそれをつかみ出した
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井戸のそとにでてみると
ぼくのたからものはたしかに
ぼくのたからものだったが
前よりも黒くにぶった色をしていた
ぼくはかなしくなった
もう前のようにおひさまの光を
おどらせてはくれないのだろうか?
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ぼくは自分のシャツのすそで
どろでよごれたたからものをみがいてみた
だいじにだいじに
どろの中にまじっている小石できずがつかないように
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そうしているうちに
たからもののくすんだ色が
だんだんうすらいで
深い青色に変わったんだ
おひさまの光に透かせてみると
前とはちがったけど
ちょっと落ちついた色の光がおどった
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前とはたしかに変わってしまったけど
ぼくのたからものは
やっぱりぼくのたからもので
これからもぼくのたからもので
ありつづけるだろう
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それからぼくたちは
おひさまの光をたっぷりうけた草のうえで
少しのあいだ眠りにおちた
風が ひょうほーぅ と
ぼくたちをやさしくなでていった
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【copyright おおかみ】
一応主張しておこうと思って
無粋ですまん