人は一生に一度くらいは

魂が吸い込まれそうなくらい美しいもの

を目にすることがあると思う。

別にその機会が多いか少ないかってことを言いたいんじゃない。

これは俺がたまにおもいだすこと。

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学生時代の最後の夏休み。

人になかなかなつこうとしない野生動物みたいな生活を送っていた俺は

そんなんじゃだめだニャーなどと野良猫風且つ発作的に一念発起し

何故かチャリンコに荷物を積んで何故か日本最南端の島を目指した。

運が良いことに

その島で知り合った人の計らいで

島のさとうきび農家に居候させてもらうことになり

俺を含む総勢6名の季節的旅人が

軒下を貸してもらう代わりに

そのさとうきび畑で労働力を提供することになった。

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その日、南国的に予断を含まないカラカラの暑さと日光が

畑で汗水流している俺らを容赦無く焼き

その汗すらちりぢりに奪い取っていった。

やがて夕方になり仕事を終えた俺らは

さとうきびを刈り終えて剥きさらしになった畑の上に

疲れた体を大の字に投げ出した。

海からは絶えず陸に向けて湿った風が流れ込んできていた。

チョウチョなんかひらりとする間もなく流されていってしまいそうな

やけに強い風だ。

昼間の強い太陽に焼き尽くされてしまったのか

それともそんな強い風が持ち去ってしまったのか

夕闇迫る空には雲なんてひとつもなかった。

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そこは島だ。

海抜もそんなに高くない島だ。

高い建物なんて一切ない。

唯一背の高いさとうきびは

俺らが昼間の間に刈り取ってしまった。

つまり
 
夕空を見上げる俺らの視界をさえぎるものは

何一つなかった
ってことだ。
 
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そこには青い空だけがあった

目の中に薄闇の混じったがあふれた

魂が融けるって、あんな経験のことかもしれない

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以来、幾度となくあのを思い出す。
 
多分俺は

その思い出を齧りながらちびちび生きてる。

できるならあの青の中にもっかい融け出したい。
 
 
 
 

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