ヘアドレッサー

2004年4月23日 綴織
「人と関係を結ぶということは、
  
     ひときれの布を織り上げていくのと一緒」
 
そういいながらあなたは僕の髪にはさみを入れていく。
 
シャキ、シャキ、という歯切れの良い音を立てながら、
 
僕の髪が舞い落ちていく。
 
「布、ですか?どんな布?化学繊維でもいいわけですか?」
 
合点がいかない風な僕と鏡越しに目を合わせ、
 
               あなたはこう付け加える。
 
「まぁ、手織りの方が近いかもしれないわね
 
  布ってほら、
 
   色んな糸が交互に織り合わさって一つになってるわけじゃない
 
      糸のバリエーションで様様な模様もつけられたり…
 
 人との関係もそうなんだよ
 
   一つの布を織り上げるのとさほど変わりはないのよ」
 
 判ったような判らないような顔してる僕を置き去りにするように、
 
            髪の毛は短く切り揃えられていく。
 
「これでいいかな?さっぱりしたでしょ」
 
 後ろ髪を見るための手鏡を僕に渡しながら、あなたは窓の外を見遣る。
 
 窓の外は晴れ空がどこまでも広がっていた。
 
  すっきりした前髪から覗く空は、まるで透明度の高い湖のようだ。

    また一つ、糸が織り込まれたのを感じた。
 
 
 
 
 
 

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